
過去の展覧会
開館10周年記念
オブジェの方へ−変貌する「本」の世界−
2009年11月14日(土)〜2010年1月24日(日)
ギャラリーA・B・C
たとえば中世の写本や祈祷書。あるいは19世紀末、アーツ・アンド・クラフツ運動の中から生まれた、いわゆるブック・ビューティフルの数々。さらにピカソやマティスなど、近代の巨匠の手になるリーブル・ダルティスト。古今東西、美しい挿絵や凝った装丁の本、豪華な造りの様々な本が作られてきました。現代においてもアーティストたちの多くが美しい本を作り、あるいは本をテーマにして作品を制作しています。
しかしそのような本のあるものは、しばしば私たちの常識を超えた「本」の作品となっています。一例をあげれば、知識や物語の容れ物としての本が、文字通り「箱」や「トランク」になってしまったもの。突飛とも言える様々な加工が加えられた「本」。異質の素材によって、異質の相貌を示す「本」。焼かれた「本」等々。アーティストたちは、なぜ「本」に惹きつけられるのでしょうか。そしてまた、なぜ「本」の通年を逸脱してゆくのでしょうか。そこに現代のメディアの多様化と可能性を見ることができるかもしれません。同時に現代のアートが、技法や素材をはじめ様々に脱領域化してゆく傾向を指摘することもできるでしょう。しかしそれでもなお、本がその形態や概念を拡張し、時には機能を剥ぎ取られた1個の「オブジェ」に変容するのはなぜでしょうか。そこにはメディアの多様化やアートの脱領域化傾向だけにとどまらない、目には見えない、しかしそれだけに一層根源的な何かがあるのかもしれません。
本展では、アーティストたちを、そして私たちをも惹きつけて止まない「本」の魅力とその広がりの一端を、現在1000点を超えている当館のコレクションをもとに、未来派から現代の若手作家の「本」を通して紹介します。
<主な出品作家>
遠藤利克、柄澤齊、若林奮、加納光於、松澤宥、藤井敬子、脇田愛二郎、中村宏、福田尚代、安部典子、荒木高子、西村陽平、河口龍夫、村岡三郎、淤見一秀、山口勝弘、柏原えつとむ、李禹煥、堀浩哉、マルセル・デュシャン、ルーチョ・フォンタナ、アルマン、ピエール・アレシンスキー、ピョートル・コヴァルスキー、グドムンドゥル・エロ、ヴェロニカ・シェパス、ジョージ・マチューナス、ダニエル・スペーリ、ロバート・ラウシェンバーグ、アンゼルム・キーファー、メレット・オッペンハイム、他(順不同)
主催 うらわ美術館、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会
協賛 ライオン、清水建設、大日本印刷
後援 テレビ埼玉、エフエム浦和
コレクションから―津久井利彰と細野稔人
2009年11月14日(土)〜2010年1月17日(日)
ギャラリーD
主催 うらわ美術館
パレットのある展覧会―ピカソ、マティスから地域ゆかりの作家まで-
2009年9月5日(土)〜10月12日(月・祝)
ギャラリーA・B・C
絵画の楽しみ方には、いろいろな方法があります。もちろん、絵のモチーフや構図、色彩など、作品そのものに即して鑑賞するのが、第一の方法でしょう。しかしそれだけにとどまらず、その絵が描かれた時代や地域、状況など、興味は様々に広がっていきます。そしてそのような興味は、当然画家に対しても向けられるでしょう。どのようにしてこの絵が描かれたのか、その素晴らしさの秘密や創造の源はどこにあるのか、等々。たとえば画家が使っていたパレットを通して、そのような秘密の一端を垣間見ることができるかもしれません。パレットを見れば、その上で絵の具を混ぜ合わせて使っていたのか、あるいはカンヴァスの上で直接混ぜていたのか、というようなことも分かります。絵だけを見ていたのでは気付かなかった、新たな側面を知ることができるでしょうし、別の興味や感動を得ることもできるでしょう。
本展は、笠間日動美術館所蔵の絵画とパレットに、当館所蔵の地域ゆかり作家の絵画を加えて60余点の作品で構成します。国内外の著名な画家たちの絵画に加えて、そのパレットを通して新たな魅力を発見することができるでしょう。またゆかり作家のパレットを通して、より一層の親しみを感じることができるでしょう。
主催 うらわ美術館、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会
協賛 ライオン、清水建設、大日本印刷
後援 テレビ埼玉、エフエム浦和
ブラティスラヴァ世界絵本原画展−歴代グランプリ作家とその仕事
2009年6月27日(土)〜8月30日(日)
ギャラリーA・B・C
ブラティスラヴァ世界絵本原画展(略称BIB)は、2年に一度、スロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで開催される、ベテラン作家による世界最大規模の絵本原画展です。
本展では、一昨年に開催された第21回展より、グランプリをはじめとする受賞者11名と、国内審査を経て同展に参加した日本人作家18名の作品をご紹介します。第21回展では38ヶ国、388人のイラストレーターが参加し、延べ2,740点の原画と477冊の絵本が審査されました。その中から選ばれた絵本原画を、実際に出版された絵本と共にご覧いただけます。
また特集展示として、第1回展(1967年)から第20回展(2005年)までの歴代グランプリ作家とその仕事をあわせてご紹介します。同展が日本でまとまって見られるようになったのは第17回展(1999年)からですが、本展では、過去40年間分のグランプリ受賞作品が一堂に会します。第1回グランプリの瀬川康男(日本)から、ドゥシャン・カーライ(スロヴァキア)、スタシス・エイドリゲヴィチウス(リトアニア)、そして第20回グランプリのアリ・レザ・ゴルドゥジャン(イラン)まで、多彩な国々の豊かな個性の競演を、ご家族でゆっくりとお楽しみ下さい。
主催 うらわ美術館、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会
後援 スロヴァキア共和国大使館、NHKさいたま放送局、エフエム浦和
協賛 ライオン、清水建設、大日本印刷
広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展
歌麿・写楽から幕末バラエティーまで
2009年4月25日(土)〜6月14日(日)
ギャラリーA・B・C
浮世絵は、江戸時代に大衆文化の隆盛とともに庶民の間に花開いた芸術です。「美人画」「役者絵」「風景画」というテーマを軸に、その時々の風俗や流行、さらに庶民の趣味や趣向まで色濃く反映した多くの作品が生み出されました。それらは人々の身近なところにあって、日常生活の中で親しまれた芸術です。その一方で浮世絵は、ジャポニズムの中核をなす芸術として、19世紀後半以降のヨーロッパの芸術に多くの影響を与えました。
本展では、歌川広重の「東海道五拾三次」(保永堂版)、同じく「五十三次名所図絵」(縦絵東海道)と葛飾北斎の「東海道五十三次」(小判シリーズ)を中心に、喜多川歌麿をはじめとした「美人画」、東洲斎写楽の「役者絵」、怪談などをテーマにした「妖怪絵」、ユーモラスな「寄せ絵」、幕末の横浜の風俗を描いた「横浜絵」など多様な作品、約220点を紹介します。江戸庶民の軽快で多彩な趣味や遊びの精神を反映したバラエティー豊かな作品群と、同時にそこにある大胆で確固とした造形性をお楽しみ下さい。
主催 うらわ美術館
後援 埼玉新聞社、テレビ埼玉、エフエム浦和
監修 中右瑛(国際浮世絵学会常任理事)
企画協力 E.M.I.ネットワーク
氾濫するイメージ―反芸術以後の印刷メディアと美術1960's-70's
2008年11月15日(土)〜2009年1月25日(日)
ギャラリーA・B・C
1960年代の前衛美術は、現代音楽や舞踏、デザインなど、他のジャンルを横断するように越境し、いわゆる「反芸術」と名付けられました。続く70年代は、素材そのものをそのまま提示する「もの派」や、言語や記号を用いた観念的表現である「コンセプチュアル・アート」などを中心に語られることが多いと言えます。それらの表現は総じて禁欲的で、視覚的なイメージの豊かさからは程遠いものでした。絵画にとって冬の時代であり、「絵画」は即物的な「平面作品」へと素っ気なくその名称を変えたのです。絵画はアート・シーンの前線から後退を余儀なくされ、絵画的イメージが持つ構想力や想像力が喪失したかのような時代でもありました。
しかし時代と切り結び、それを映し出すヴィジュアルなイメージは、衰退したわけでも無くなったわけでもありませんでした。例えば横尾忠則の貼るたびに盗まれたという一連の演劇ポスターや、週刊プレイボーイで連載された『うろつき夜太』(柴田錬三郎著)をはじめとした数々のイラストレーションや本の装丁など。あるいは社会的な事件にもなった赤瀬川原平の「模型千円札」やそれに続いて『朝日ジャーナル』の回収という事態を引き起こした「櫻画報」等々。それらはアングラ演劇や舞踏、さらに安保闘争や学園紛争などの時代状況を濃密に内包しながら、多様なイメージが様々なメディアを通して、あたかも氾濫するかのように盛んに展開されたのです。
本展では、1960年代から70年代にかけてのそのようなヴィジュアル・イメージを上述の二人を含め、粟津潔、中村宏、木村恒久、タイガー立石、つげ義春、宇野亜喜良の作品を通して紹介します。ポスター、書籍(装幀)、雑誌(挿絵)、原画および関連する絵画や版画、オブジェなど、多種多様な多くの作品や資料で構成します。
出品作家と作品
赤瀬川原平 ―模型千円札・櫻画報/オブジェ・ポスター・原画等
粟津潔 ―メタボリズムから花鳥へ/ポスター・装丁・版画等
宇野亜喜良 ―人間存在と性/ポスター・装丁等
木村恒久 ―ザ・キムラカメラ/フォト・モンタージュ・原画
タイガー立石 ―コマ割り絵画とマンガ/絵画・版画・原画
つげ義春 ―不条理/ねじ式原稿(出力)・版画等
中村宏 ―呪物的絵画/ポスター・装丁・絵画・原画等
横尾忠則 ―大衆的イコンから精神世界へ/ポスター・装丁・絵画・原画等
その他600点以上の作品・資料で構成します。
主催 うらわ美術館 、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会
協賛 ライオン、清水建設、大日本印刷
後援 NHKさいたま放送局、エフエム浦和
コレクションによるテーマ展XI 郵便がつなぐ美術
2008年11月15日(土)〜2009年1月25日(日)
ギャラリーD
美術作品の中には、カンヴァスに描かれた絵や彫刻だけでなく、はがきや切手をモチーフにしたものや、郵便制度を取り込んで成立しているものがあります。日本では20世紀初め、私製はがきの認可後まもなく絵はがきブームが到来し、洋画家、日本画家を問わず数多くの美術絵はがきが発行されました。一方、イタリア未来派の画家たちはプロパガンダとして手描きの絵はがきを活用し、ロシア・アヴァンギャルドの作家たちは後にメール・アートの一端を担うことになるゴム・スタンプをいち早く作品の中に取り入れました。
1950年代半ば以降になると、単に切手やはがき、スタンプなどを手がけるだけでなく、郵便制度を意識的に利用する作家たちが現れるようになります。既存の美術制度に拠らない作品の自律と普及を目指し、作品を発表し交換する手段として、郵便が注目されたのです。最も早く郵便によるネットワークを確立したアメリカの作家、レイ・ジョンソンを筆頭に、様々なアイディアや表現を郵便で取り交わす「メール・アート」と呼ばれるジャンルも生まれました。ギルバート&ジョージは展覧会の招待状を「彫刻作品」として発送し、河原温は自分が起きた時間を毎日葉書で通知する「I GOT UP」シリーズを制作しています(ギルバート&ジョージ、河原温は出品されません)。塩見允枝子はイヴェントを促す招待状を世界各地のアーティストに送付し、返送されたイヴェントの記録から空間的な詩を意味する「スペイシャル・ポエム」をまとめました。既存の美術制度に縛られないこのような活動は、アーティスト・ブックの制作動機とも重なるもので、双方に携わる作家も少なくありません。
この展覧会ではうらわ美術館の所蔵品を中心に、郵便に関わる作品約30点を展示します。私たちの生活に身近な「郵便」という視点から作品を眺めることで、思わぬ面白さが感じられるのではないでしょうか。また、すでに様々なイメージをまとっている「メール・アート」という言葉に左右されることなく、広く「郵便がつなぐ美術」として作品を捉え返すことで、改めて美術と郵便との関わりについて考える契機になれば幸いです。
主催 うらわ美術館
表現者たち…ゆらぐ境界を越えて―収蔵作品と子どもの作品―
2008年9月6日(土)〜10月13日(月祝)
ギャラリーA・B・C・D
「子どもの表現、大人の表現、作家の表現」…同じように、色と形と素材によって構成された表現であっても、これらは往々に違う次元のものと捉えがちです。特に、子どもの表現に対しては、芸術に対する意識や知識、継続性などが不足しているために、芸術表現とは見なさないという意見があります。確かに、芸術、特に近代における芸術表現は、作り手の芸術意識によって成立しているという要素が強く、同時に、鑑賞する側にも同一の意識を要求することがあります。
一方、子どもの表現は、創造性の源泉からほとばしり出るような、真に自発的で独創的な作品を生み出す場合があります。そしてまた、鑑賞する側の意識の有り様によっては、その作品からインスピレーションや感動を得ることができるのではないでしょうか。
子どもの表現とは何ものなのか。そこから生み出される作品は、芸術か否か。展示環境を整えることで鑑賞する側の意識に何らかの変化を与えることができるのか。このような疑問が、この展覧会を企画するきっかけとなりました。本展では、美術館の展示環境の中で、子供たちの作品を当館の収蔵作品と一緒に展示し、両者のそれぞれの魅力を引き出そうと試みます。
絵画、本のオブジェ、彫刻など、うらわ美術館のコレクション約50点と、未来を担う子どもの作品約100点を同時に楽しんでいただくことを通して、芸術表現やそこから生み出される作品の価値を問いかけようとするものです。
同時に子供たちが作った映像作品の上映を行います。
主催 うらわ美術館
後援 埼玉新聞社、テレビ埼玉
ぐりとぐらとなかまたち 山脇百合子絵本原画展
2008年7月5日(土)〜8月31日(日)
ギャラリーA・B・C
山脇百合子さんは『いやいやえん』(文:中川李枝子、福音館書店、1962年)で挿絵デビューしました。以降たくさんの絵本や童話などに、子どもや動物たちが繰り広げる楽しい遊びや冒険のおはなしを描き続けています。中でも二匹の双子の野ねずみを主人公とした『ぐりとぐら』は、1963年に誕生して以来シリーズ絵本として親しまれ、海外でも出版を重ねるなど、世代や国境を超えて愛されている人気作品の一つです。
山脇さんの絵は、登場キャラクターはもちろん、それ以外の草木や日常生活における小物までも丁寧に描き込まれ、読むたび、見るたびに私たちを穏やかで温かな気持ちにしてくれます。
本展は、宮城県美術館が所蔵する山脇百合子さんの絵本と挿絵の原画から選んだ23タイトル、約320点の原画や資料によって、山脇さんのイラストレーション世界を紹介するものです。キャラクターの生き生きとした表情や色使いなど、日頃から目にしている絵本とはまた一味異なる原画ならではの魅力をお楽しみください。
主催 うらわ美術館 NHKプロモーション
後援 埼玉新聞社、テレビ埼玉
協力 宮城県美術館 福音館書店 埼玉こどものとも社
誌上のユートピア−近代日本の絵画と美術雑誌1889-1915
2008年4月26日(土)〜6月8日(日)
ギャラリーA・B・C・D
19世紀末のヨーロッパでは、印刷技術のめざましい発展を背景に、『パン』や『ユーゲント』、『ヴェル・サクルム』など、誌面そのものが「美術作品」と呼ぶにふさわしい美術雑誌が次々と刊行されました。日本でもこのような動きに刺激され、また連動するように、20世紀にかけて多くの美術雑誌が生まれています。
明治浪漫主義の文学と美術を代表する『明星』や創作版画運動の端緒を切り開いた『方寸(ほうすん)』、抽象的な表現の追及がみられる『月映(つくはえ)』をはじめ、美術雑誌は美術と文学の交流の場として、また自由な実験の場として大きく花開き、新たな表現の獲得にも繋がりました。この展覧会では、この時期日本で発行された主な美術雑誌を紹介し、その素晴らしさを再確認すると共に、同時代に制作された絵画にスポットを当て、相互関係に注目します。
雑誌の表紙や本の口絵にも真価を発揮した青木繁、藤島武二、恩地孝四郎ら同時代のすぐれた芸術家たちは、印刷芸術の華やかな誌面と交感しながら、どのように「ユートピア(理想郷)」を求め、実現していったのでしょうか。先駆けとなったヨーロッパ世紀末の美術雑誌を含み、油彩画約40点、日本画約10点、版画約40点、雑誌約40タイトル、書籍約40点、その他水彩画やドローイング、ポスター、絵葉書など200点あまりの作品(一部展示替えを含みます)から、世紀の転換期に繰り広げられた多様な試みと豊かな成果を振り返ります。
なお、 4月26日(土)〜5月18日(日)を前期、5月20日(火)〜6月8日(日)を後期として、一部作品の展示替えを行います。
開館時間 午前10時−午後5時/土曜日・日曜日のみ 午後8時まで
(入場は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(5月5日の祝日は開館)、5月7日(水)
観覧料 一般 600円(480円)、大高生 400円(320円)、中小生 200円(160円) *( )内は20名以上の団体料金
主催 うらわ美術館、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会
後援 NHKさいたま支局
協賛 ライオン、清水建設、大日本印刷
ギャラリートーク
4月27日、5月11日、25日、6月8日(隔週日曜日)14:00〜
自由参加。ロビーにお集まりください(当日の観覧券が必要です) 。
5月11日は森仁史氏(松戸市教育委員会学芸員)、5月25日は森仁史氏と堀越洋一郎氏(武蔵野美術大学教授)、4月27日、6月8日は当館学芸員が行います。
画家 岸田劉生の軌跡 油彩画、装丁画、水彩画などを中心に
2007年11月17日(土)〜2008年1月27日(日)
ギャラリーA・B・C
近代日本の洋画を代表する一人である岸田劉生は、愛娘麗子をモデルとした絵をはじめ、多くの作品で知られています。1891(明治24)年に生まれ、1929(昭和4)年にこの世を去った劉生は、わずか38歳という短い生涯において、近代日本絵画の独自性を探求する印象的な作品を数多く残しました。黒田清輝に油彩画を学び、同人雑誌『白樺』を通じて知ったゴッホやセザンヌら後期印象派に惹かれ、その後はデューラーらの北方ルネサンス絵画に影響を受けました。しかし、大正時代後半になると、それまでの西洋画への傾倒から一変し、東洋の美へ意識が強まります。洋画家のイメージが強い劉生ですが、晩年にかけては初期肉筆浮世絵や中国の宋元画など東洋的要素も取り入れ、大胆に作風を変化させていきました。
本展は、笠間日動美術館の収蔵品を中心とし、初期の作品から晩年に到るまでの劉生芸術の軌跡をたどるものです。「劉生の首狩り」と称されるほど多くの友人・知人を描いた肖像画や水彩画、版画を含めた約120点の作品によって画業を振りかえると共に、特に様々な表情・姿の麗子が登場する装丁画を通じて、劉生の新たな魅力を探ります。
主催 うらわ美術館
後援 テレビ埼玉、読売新聞さいたま支局
企画協力 財団法人日動美術財団
コレクションによるテーマ展X 写真とアーティスト・ブック
2007年 11月21日(水)〜2008年1月27日(日)
ギャラリーD
様々な捉え方がある“アーティスト・ブック”を定義するのは非常に困難ですが、ひとつの考え方として、1960年代以降に美術家が作品集としてではなく表現媒体の一つとして冊子を意識し、制作した本のことを、狭義でアーティスト・ブックと呼んでいます。その多くはオフセット印刷で、部数は数百から数千に及ぶアーティスト・ブックは、モダン・アートの作家によるオリジナル版画を収めた豪華な挿絵本とは対照的に安価でシンプルなつくりですが、その内容はグラフィカルなもの、詩やタイポグラフィによるもの、コンセプチュアルなものなど様々な領域に及び、写真を用いた本も数多く制作されています。自らを「生きる彫刻」と称し、パフォーマンスを行ったギルバート&ジョージ。肖像写真を用いてモニュメンタルな作品を制作するクリスチャン・ボルタンスキー。自身で出版社を興し、本の作品を多数発表するハンス=ぺーター・フェルドマン。そしてアーティスト・ブックの先駆者の一人であり、その後の動向に大きな影響を与えたエドワード・ルシェの作品も写真によるものでした。
この、写真を用いたアーティスト・ブックは、写真集といかに異なっているのでしょうか。まず考えられるのは写真のクオリティです。既存の写真を流用したり、他人に撮影を依頼したり、自ら撮影することにはこだわらないことが多く、粗い粒子の写真を多用しています。写真自体を見せることが目的ではないからです。では一体写真はどのような働きをなし、何を伝えているのでしょうか。この展覧会では当館収蔵作品の中から写真を用いたアーティスト・ブックに着目し、43点を展示します。一部作品を手にとっていただきながら、一般にはあまり知られていないアーティスト・ブックの魅力を紹介します。なお今後も引き続き、詩やイラストなどのテーマをもとにアーティスト・ブックの小企画を開催していく予定です。
主催 うらわ美術館
風景、そして人・・・高田誠と渡辺武夫展
2007年9月8日(土)〜10月8日(月祝)
ギャラリーA・B・C
うらわ美術館では、地域ゆかり作家の優れた作品の収集を収集方針の1つにしています。本展ではゆかり作家の中でも、中核をなす作家である二人の画家を紹介します。
高田誠は1913(大2)年浦和(現・さいたま市)に生まれました。当初安井曽太郎に師事しますが、点描による独自の画風を確立しました。一水会を中心に、主に風景をモチーフとして対象を見つめる堅実な眼差しの上に、点描による装飾性が融合する多くの作品を制作しました。
渡辺武夫は、1916(大6)年東京本所区(現・墨田区)に生まれ、1920(大9)年浦和(現・さいたま市)に転居しました。光風会を中心にして、初期には主に正当的な技法に裏付けられた人物画を制作しましたが、国内外の風景画にも柔らかく暖かいスタイルを確立しました。
活動の母体となる場は違っても、ともに埼玉の美術文化に貢献し、後に芸術院会員として活躍したところは共通しています。油彩を中心に各々30点の作品を通して二人の画業を振り返ります。
主催 うらわ美術館
後援 埼玉新聞社、テレビ埼玉
一水会と光風会の画家たち−収蔵作品より
2007年9月8日(土)〜10月8日(月祝)
ギャラリーD
「風景、そして人…高田誠と渡辺武夫展」に合わせて、 一水会と光風会の画家たち−収蔵作品より 」を開催します。高田誠は一水会の、渡辺武夫は光風会の、それぞれ重鎮の画家でした。本展ではそれに関連して、収蔵のゆかり作品の中から一水会と光風会の画家を3人ずつ、計6人紹介します。
川村親光の穏やかな武蔵野の風景画。小松崎邦雄の牛やフランス人形や舞妓像。小川游の厳しさの感じられる冬景色。光風会の設立者の一人でもあった跡見泰の安定感のある風景。寺内萬治郎の裸婦や確かな筆致のデッサン。田中実の水彩によるあでやかな女性像。これらは各作家の特徴のほんの一部です。それぞれモチーフや作風は違っていますが、いずれも堅実で確固とした作品世界をお楽しみください。
世界の絵本がやってきた ブラティスラヴァ世界絵本原画展
2007年7月14日(土)〜9月2日(日)
ギャラリーA・B・C
ブラティスラヴァ世界絵本原画展は、1967年よりスロヴァキア共和国の首都ブラティラヴァで2年1度開かれている、世界最大規模の絵本原画展です。日本でもよく知られているボローニャ国際絵本原画展が新人作家の登竜門であるのに対し、ブラティスラヴァ世界絵本原画展では各国のベテラン作家の作品が一堂に会し、個性を競い合います。
2002年、2004年に続き当館では3回目の開催となる本展では、2005年に行われた第20回展から、受賞作品46点と日本人作家による出品作品56点、そして43カ国から出品された様々な絵本を紹介します。グランプリを受賞したアリ・レザ・ゴルドゥジャン(イラン)をはじめ、金のりんご賞受賞のリリアン・ブレガー(デンマーク)、ハン・ビョンホ(韓国)、金牌賞受賞のピエール・プラット(カナダ)、酒井駒子(日本)など、まさに世界各地から個性あふれる絵本原画が集まりました。出版された絵本と見比べながら、原画ならではの世界をお楽しみください。
また展覧会の後半部では、スロヴァキアの隣国、チェコの1920〜30年代を中心とした子どもの本と関連作品を紹介します。この時期チェコの子どもの本は黄金期を迎えました。その創始者の一人であるヨゼフ・ラダや近年日本でも注目が集まっているヨゼフ・チャペック、人形アニメーションの巨匠でもあるイジー・トゥルンカらの原画と共に、書籍を約70点展示。ラダとチャペックのアニメーション作品もご覧いただけます。
主催 うらわ美術館、読売新聞東京本社、美術館連絡協議会、
(社)日本国際児童図書評議会(JBBY)
後援 チェコ共和国大使館、スロヴァキア共和国大使館、日本チェコ協会、日本スロバキア協会、
スロヴァキア国際児童芸術館(BIBIANA)、NHKさいたま放送局
協賛 ライオン、清水建設、大日本印刷、東京電力
協力 株式会社アット アームズ、株式会社レン コーポレーション
生誕100年記念 須田剋太展 生命の讃歌
2007年4月28日(土)〜6月24日(日)
ギャラリーA・B・C
須田剋太は、独特のおかっぱ頭とつなぎのジーンズという風貌で知られていますが、作品でも強烈な個性を示しました。1906年埼玉県吹上町で生まれ、その後浦和(現・さいたま市)に出て油絵を学びました。東京美術学校の受験に4度失敗し、画家を諦めかけますが、写楽やゴッホに出会い生涯画家になる決心をしました。戦前から戦後にかけて新文展および日展で3度特選になるなど、具象画家として着実にその地歩を築きましたが、戦後長谷川三郎と出会い彼の理論に共鳴し、まもなく抽象画に転向します。抽象画においてもその強烈な個性は変わらず、国外でも高い評価を得ました。1971年からは「週刊朝日」に連載の司馬遼太郎『街道をゆく』の挿絵を1990年まで、20年間、897回にわたり担当し、それによって一挙に知名度も高まりました。
本展は生誕100年を記念し、初期の日展特選作から抽象を経て絶筆にいたるまで、油彩、グワッシュ、書、陶芸など、多彩な作品を一望し、その全貌を紹介します。須田芸術に一貫する力強い魅力に迫るとともに、その中でも特によく親しまれている『街道をゆく』の原画を40点、特集展示します。
出品作品
「築地本願寺」(1937年)ほか初期の作品 6点
「作品 1973 黄金」(1973年)をはじめとする抽象作品 21点
司馬遼太郎『街道をゆく』原画 40点
「酔芙蓉花」(1988年)、「遊女之図」(1988年)など具象作品 36点
年賀状のための十二支図 12点
書・陶の作品など 17点 計132点
コレクションによるテーマ展IX 和を装う本
2007年4月28日(土)〜6月24日(日)
ギャラリーD
日本の書物は、古来より巻子本や折本、冊子などの形態で活用されてきました。巻子本は物語絵巻や道中絵巻といった巻物で、折本はお経の形で用いられているのをどこかで目にしたことがあるでしょう。冊子形態では室町時代に中国明より伝わった装訂(糸でかがる袋綴じ)が、和装本の基本的な装訂方法として受け継がれ、長く人々に親しまれてきました。しかし明治に入ると、西欧文化の流入に伴ない生産性に富んだ洋装本が普及し始め、大量生産に適さない和装本は時代の変遷と共にその影をひそめることになりました。洋装本に囲まれた今日では、和装本のような「和」を感じる本と出会う機会は多くありません。
そこで本展では、「本をめぐるアート」に基づいた収蔵品の中から「和」にスポットを当て、和綴じ本や「和」の色あいを放つ素材・表現の多様な本を15タイトル136点紹介します。思わず触りたくなるようなちりめん加工の施された「ちりめん本」は明治期生れ。英語やフランス語、ドイツ語などの諸外国語版が出版され、広く西洋の関心を集めました。民芸運動の機関誌である『工藝』は、染布や和紙を装幀に、また各地で漉かれた和紙を料紙に用い、それ自体が工芸的な趣きを見せています。『寓話』や『ドン・キホーテ』、『出埃及(えじぷと)記』などの外国の物語は和風の挿絵や短歌で表現され、話の内容と表現方法とのギャップや奇妙な馴染み方が面白みを誘います。様々な分野で「和」が注目されている今、本の世界でも「和」の魅力を再発見してみませんか。
ピカソ、マティス、シャガール・・・巨匠が彩る物語
2006年11月18日(土)〜2007年2月18日(日)
ギャラリーA・B・C
ピカソやシャガール、マティス、ミロなどよく知られる巨匠たちが挿絵本を作っていたのをご存知でしょうか。20世紀中盤、モダン・アートの高まりと共に、オリジナルの版画を収めた挿絵本も一つの黄金期を迎えました。前世紀から続く版画への関心の高まりと技術革新、画家たちによる実験的な制作を背景とし、ヴォラールやスキラ、テリアードといった出版者が牽引役となって豊かな挿絵本の世界が花開いたのです。モダン・アートの作家たちは有能な刷り師の協力を得て版画特有の様々な表現を試み、一点一点が独立した作品として成立し得る挿絵を作り上げました。その上、あるテーマのもとに制作された連作版画としての挿絵は、単独の版画作品とは異なる魅力や広がりを有しています。
「本をめぐるアート」を収集方針とする当館ではこれまで多くの挿絵本を収集してきましたが、その中身をじっくり紹介する機会には恵まれませんでした。そこで今回は代表的な挿絵本9作品をピックアップし、3章に分けて紹介します。シャガールやピカソが描いた動物たち、サーカスに魅了されたマティス、レジェ、コールダーの色と形、ロンゴスやラブレー、ジャリ、ツァラのテキストを彩ったドランやミロ、シャガール。展示替えを挟みながら版画による挿絵を約270点展示します。
挿絵の依頼を受けながらビュフォンのテキストを参照しなかったピカソや、登場動物を自由に入れ替えたシャガール、自身で文章も書いたレジェやマティス、テキストと挿絵を一体化させたミロなど、文と絵の関係は様々ですが、いずれも創造性と独創性のあふれる挿絵となっています。作品成立をめぐる背景やあらすじ、画家たちの解釈と工夫と共に、版画の濃密な世界をお楽しみください。
出品作品
《いきものたち》
マルク・シャガール「寓話」1952年 ロンゴス著
パブロ・ピカソ「博物誌」1942年 ビュフォン著
《色、かたち、リズム――サーカスと共に》
アンリ・マティス「ジャズ」1947年 マティス著
フェルナン・レジェ「サーカス」1950年 レジェ著
アレクサンダー・コールダー「祝祭」1971年 ジャック・プレヴェール著
《文学との出会い》
アンドレ・ドラン「パンタグリュエル」1943年 ラブレー著
ジョアン・ミロ「ひとり語る」1950年 (前期のみ出品)
ジョアン・ミロ「ユビュ王」1966年 (後期のみ出品)
マルク・シャガール「ダフニスとクロエ」1961年
版画でめぐるパリ−藤田嗣治とアルベルト・ジャコメッティ 2006年9月9日(土)〜10月9日(月祝) 第1期 10月10日(火)〜11月17日(金)休室
2006年11月18日(土)〜12月24日(日) 第2期
2007年1月5日(金)〜2月18日(日) 第3期
ギャラリーD
26歳の時にフランスにわたった藤田嗣治(1886-1968)は「乳白色の肌」の裸婦像を描き、パリの寵児となりました。「パリの画家たちの中でもっともパリジャン」であると言われるほどにパリに溶け込み、晩年にはフランス国籍を取得しています。一方20歳でパリに出たアルベルト・ジャコメッティ(1901-65)は、戦争中に一時故郷スイスに戻ったものの、生涯の40年余りをパリで過ごしました。藤田もジャコメッティも、かけがえのない街としてパリを愛し慈しんだ美術家だと言えるでしょう。
この二人は共にパリをモチーフとした挿絵本を制作しています。ジャコメッティは毎日のように行き来していた通りやカフェ、アトリエなどを素早いタッチによりモノクロームのリトグラフに収め、藤田はオペラ座やパレ・ロワイヤル、シャンゼリゼ通りなどセーヌ右岸の名所を織り交ぜながら、様々な風景や風俗を独特の繊細な描写で銅版画に表しました。
この展覧会では、藤田とジャコメッティが愛しんだパリの街を紹介しながら、二つの挿絵本に収められた版画約70点を展示します。二人は一体どのような場所を描いたのでしょうか。作風は全く異なりますが、それぞれにパリの情緒や雰囲気を描き出しています。作品を鑑賞しながら、パリを旅する気分になっていただければ幸いです。なおこの展示は3期に分けて展示替を行い、毎回異なる作品を出品します。
出品作品 藤田嗣治「魅せられたる河」1951年
ルネ・エロン・ド・ヴィルフォス著 ベルナール・クライン刊
エッチング24点
アルベルト・ジャコメッティ「終りなきパリ」1969年
アルベルト・ジャコメッティ著 テリアード刊 リトグラフ150点
主催 うらわ美術館
ウィルコンさんの動物ファンタジー ポーランドの絵本画家 ヨゼフ・ウィルコンの世界
2006年7月8日(土)〜2006年10月9日(月祝)
ギャラリーA・B・C
本展は、ヨゼフ・ウィルコンによる動物をテーマにした作品を紹介するものです。ウィルコンは東欧を代表する絵本画家であり、グラフィックデザイナーや彫刻家としても、動物を主役にした数々の作品を作り出しています。また世界各地でワークショップや著作物の出版が行われ、国際的にも広く活躍しています。
会場では廃材や流木、ブリキを用いて作られた、様々な種類や大きさの動物たちを展示します。丸太から生れたウサギや犬、鳥などのオブジェは愛らしく、魚たちはユーモラスでありながら海の神秘性をも感じさせてくれます。その他、絵本とその原画の展示により、個性的なキャラクターをストーリーと共にお楽しみ頂けます。
ウィルコンの生み出す動物たちはダイナミックで親しみやすく、表情も豊かです。そこには自然や動物など、あらゆるものに対する作家の温かな眼差しと深い愛情を感ぜずにはいられません。この楽しく優しさ溢れる世界で、素敵な夏休みの思い出を残して下さい。
ヨゼフ・ウィルコン Jozef Wilkon
1930年、ポーランドのボグチッツェに生まれる。クラクフ美術大学で絵画を、ヤギェウォ大学で美術史を学ぶ。1957年よりイラストレーター、グラフィックデザイナーとして活躍。ライプツィヒ国際図書デザイン展金賞を皮切りに、ボローニャグラフィック賞、ライプツィヒ栄誉賞など国際展の受賞多数。また、2005年6月には、これまでの功績が称えられポーランド政府より文化勲章を授与された。ドイツ、イタリアをはじめヨーロッパ各地で展覧会や子ども向けワークショップを開催。ヨーロッパを代表する絵本作家。
主催 うらわ美術館
後援 ポーランド大使館、埼玉新聞社、テレビ埼玉
協力 株式会社アーテック
企画協力 WonderArtProduction
特別公開 培広庵コレクション 近代の美人画―その耽美と憂愁
2006年4月29日(土祝)〜2006年6月18日(日)
ギャラリーA・B・C
「女性美」は、古今東西を問わず、美術の永遠のテーマであると言ってよいでしょう。特に江戸時代は、浮世絵の流行とともに美人画が最も愛された時代でした。明治以降も、依然根強い人気を保って珠玉の名品が数多く描かれてきました。浮世絵の流れを汲む鏑木清方、池田輝方・蕉園夫妻、清方門下の伊東深水など、上方では、上村松園をはじめとする女流画家たちや、土田麦僊、菊池契月、甲斐庄楠音などが、印象深い名品を残しています。
このような美人画を見る機会は少なくはありませんが、近代美人画の全貌を知ることは容易ではありません。特に美人画のコレクターが長い年月と情熱をかけて収集した作品がまとまって公開される機会は、まだまだ少ないと言えるでしょう。本展はコレクターの全面的協力を得て、80点の作品を特別公開するものです。このコレクションの特色は、大正時代から昭和初期にかけての日本画特有の耽美的で憂愁を含んだデカダンス趣味にあると言えます。近代日本画における女性美が、どのように表現されてきたかを分かりやすく、興味深く紹介します。
主催 うらわ美術館
後援 埼玉新聞社、テレビ埼玉
監修 加藤類子(美術評論家)
四方田草炎―竹林
2006年4月29日(土祝)〜2006年6月18日(日)
ギャラリーD
昭和6年から11年頃まで浦和に滞在した四方田草炎(1902−1981)は、戦中、空襲によって手元にあった全ての本画を焼失します。そして戦後、しばらくは本画も描いていますが、次第にデッサンばかり描くようになります。後年、彼は「デッサンが描けなければ、絵描きじゃない。60歳後半までデッサンをやり、80歳までに本画が描ければそれでよい」と語っています。 1947(昭和22)年頃から約3年間、茨城県の霧積山中にこもってデッサンに没頭し、その後1950年代から60年代にかけて充実した制作活動を示しました。
本展出品の「竹」の連作10点は平成17年に新収蔵となったものですが、制作年ははっきりとしていません。しかしこの時期、50年代のある頃に描かれたものと思われます。一部着彩はされていますが、多くの描き直しの線が残ったまま、所々紙を切り貼りして描き直したところもあります。サインや落款も入っておらず、未完のデッサンと言えるでしょう。画面もほとんど竹の幹だけが、一見無造作に無骨に描かれているだけです。情緒的な装飾性などは感じられず、むしろそれらを意図的に廃することによって、却って竹のしなやかな強靭さとでもいうものを表しているようです。一室が全てこの竹の連作で埋め尽くされた時、私たちはそこに現実の竹林とはまた違った四方田の「竹林」を見ることが出来るでしょう。
四方田草炎[よもだ そうえん]1902(明35)年−1981(昭56)年
埼玉県児玉郡北泉村(現・本庄市)に生れる。本名清次郎。1921(大10)年上京し、医学関係の書店などに勤めながら、川端玉章が創始した川端画学校夜間部に通う。1928(昭3)年、川端龍子の私塾、御形塾に入り、翌年、龍子が結成した青龍社へ出品。1930(昭5)年、第2回青龍展に出品した龍子の作品の画題「草炎」にちなみ、師より雅号を贈られる。この頃、浦和町に転居(1936年に東京へ転出)、バラックの画室を借り須田剋太と交流する。戦中、空襲で手元にあった本画をすべて焼失する。1947(昭22)年会発足に参加。群馬県霧積の山中で素描に没頭。デッサン力が尊敬する横山大観に認められる。作陶にも取り組むが、病気のため断念。東京で没。
主催 うらわ美術館 |